公募とは
公募とは、不特定多数の投資家に対して新しく発行する有価証券の購入を募集することを指します。不特定多数というのは、50名以上の投資家を相手に勧誘をすることを指し、逆に50名以下の一部の投資家にのみ有価証券の購入を勧誘する場合や、50名以上であっても勧誘相手がプロの機関投資家である場合には「私募」と言われます。この公募には企業が株式を上場する際に行われるIPOや、また既に上場している企業が株式市場から新たに資金調達をするために行う公募増資などがあります。
IPOにおける公募
IPOで行われる公募は投資家にとって非常に魅力的な投資先です。一般的にIPO銘柄を公募で購入する際の株価である「公募価格」は、上場後に初めてついたその銘柄の価格である「初値」を上回ることが多いとされています。つまり、IPO銘柄の公募の場合、抽選に当たるのが難しいというデメリットもありますが、その抽選に当たってしまいさえすれば、高い確率で売却益を獲得することができます。
投資家にとっての公募増資
それに対して、公募増資の場合は投資家にとって魅力的であるとは必ずしも言えません。企業が公募増資をすることによって、その企業が設備投資や研究開発などへの投資をより活発に行えるようになり、それによって今後の成長が期待できます。しかしながら、それと同時に新しく株を発行するということは、増えた株以上に利益も増えなければ、1株当たり利益(EPS)が低下してしまう、ということになります。
例えば、毎年、1000億円の利益を獲得している企業があり、その企業の発行済み株式数が1億株だったとしましょう。この場合、一株当たりの利益(EPS)は、1000円となります。そして、この企業がより高い成長を求めて、新しく5000万株を発行して資金調達をすることを決めた場合を考えてみましょう。もしこの企業が公募増資によって集めた資金を成長のための投資にうまく使うことができ、利益が800億円増加し、毎年1800億円の利益を稼ぎ出す企業に成長できれば、この企業の一株当たり利益(EPS)は、1200円と向上し、それによって株価も高まることになります。しかし、もし、この公募増資によって集めた資金をうまく活用できずに、利益の増加が200億円しか増えなかった場合、この企業は毎年1200億円の利益を達成する企業となり、一株当たり利益(EPS)は800円にまで低下し、それによって株価も低下することになります。
このように、既に上場している企業が公募増資を行う場合、その増資をうまく成長の達成に用いることができれば株価も上昇していきますが、逆にうまく活用できない場合には一株当たり利益の希薄化によって株価は下落してしまうことになります。そのため、もし既に上場している企業の公募増資に応じて株の購入を検討するのであれば、集めた資金を何に使うのか、それが本当にその企業に大きな成長をもたらすのかについてしっかりと分析する必要があります。